こころ、ふわり


待ち合わせ場所に着いた時には、約束の時間の5分前だった。


私が広場のベンチに腰を下ろして待っていると、後ろから背中を小突かれた。


「おはよ」


真司がニコッと笑って立っていた。


「お、おはよう」


私が返事を返すと、真司はすぐに手を差し出してきた。


「え?なに?」


よく分からなくて尋ねると、呆れたように真司がため息をつく。


「デートなんだから手繋ぐだろ?」


「え!いいよ!無理無理!付き合ってるわけでもないのに繋げないし恥ずかしい」


全力で首を振っていると両手で顔を押さえつけられた。


「もう今日は何を言っても拒否権ないからな。約束は約束。デートだからそれらしいことしよう」


そして私が言い返す前に強引に手を引かれた。


真司ってこんなキャラだったかな?
もっとこう、お調子者で、人をからかうことだけを生きがいにしているような感じだと思っていたのに。


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