こころ、ふわり
手を繋いで歩くなんて、付き合ってなくてもしていいことなんだとこの時私は初めて知った。
「ねぇ、真司って今まで何人くらいの子と付き合ったことあるの?」
おもむろに聞いてみる。
真司は「はぁ?」とびっくりしたような顔をしていた。
「なんでそんなこと聞くんだよ?」
「なんか、女の子の扱いに慣れてるような気がしたから……」
真司には気になることとか聞きたいことがあると、気兼ねなくすぐに聞けてしまう。
私と真司は高校2年で初めて同じクラスになった。
だからそれ以前の彼のことは知らなかった。
「2人かな」
真司はそう答えて、私の手を引いて歩き出した。
いつも制服姿しか知らない彼の私服は、意外とシンプルで飾り気のないもので落ち着いて見えた。
「萩は?今まで何人と付き合ったの?」
今日は真司は、私を「萩」と呼んだ。
いつもの「おはぎ」ではなかった。
「残念ながら付き合ったことありません」
「え、そうなの?」
真司はとても意外そうに目を丸くしていた。
寂しい女とでも思っただろうか。