こころ、ふわり
「じゃあ手繋ぐのって初めて?」
「あ、うん……」
真司に改まって言われると、私の中で恥ずかしさともどかしさがどんどん沸いて出てきた。
今日はいいとして、明日から真司とどんな顔をして会えばいいのだろう。
付き合ってもいないのに手なんか繋いじゃって。
むしろ芦屋先生のことが好きなのに、こんなことをしていていいのかと自問自答する。
「じゃあ余計に楽しんでもらわないとな 」
そう言ってくれた真司の顔は、いつも学校で見せる顔とは少し違って見えた。
なんというか、とても優しい印象を持った。
足を怪我している私を気づかいながら、真司はゆっくり一緒に歩いてくれたので助かった。
彼が連れてきたのは映画館だった。
ここなら体力を使うこともないので、私の怪我に響くこともない。
「なんの映画観る?」
真司に尋ねられて、私は迷った。