こころ、ふわり
映画館を出たところで、真司がまた私の手を握ってくる。
手を繋ぐことにまったく慣れていない私はビクッと肩を震わせてしまった。
「ビビりすぎ」
真司は私の反応が面白いらしく、お腹を抱えて笑っている。
「ねぇ、別に手なんて繋がなくてもデート出来るんじゃない?」
今日1日ずっとドキドキし続けて心臓が持たないような気がしてきたので、なんとかこの場を打開したくてそんなことを言ってみる。
でも真司は首を縦に振ることは無かった。
「ダメ。俺が繋ぎたいの」
真司に振り回されている自分が、いつもの自分じゃないみたいだった。
「あいつはこんなこと絶対しないだろ?先生だから」
歩きながら彼は芦屋先生のことを話題に出してきた。
「急に夏休み明けに赴任してきた先生にお前の気持ちを全部持ってかれて、俺は頭にきてるんだ」
「だからって芦屋先生に当たらないでよ……先生に対する態度、けっこうひどいよ?」
「無意識に出ちゃうんだな、きっと」
まるで他人事のように言う真司に、私はどのように返していいか分からなくなり黙り込んでしまった。
すると真司は、少し反省会したように
「分かってるよ。ガキっぽいだろ、俺」
と頭をかいた。