こころ、ふわり
11 気づかれないように
真司とデートをした翌日。
月曜日なので早速顔を合わせることになる。
いつも通りにする、と真司はそう言ってくれていたから、私もそのようにしようと決めた。
朝、駅で待ち合わせをして一緒に登校している菊ちゃんに
「昨日はどうだったの?」
と、尋ねられた。
「楽しかったんだ、すごく」
私は菊ちゃんには嘘はつけなくて、自分が本当に思ったことを口にした。
「好きな人じゃないのに楽しかったなんて、変だよね」
「なんで?普通のことじゃん」
意外そうな声を上げた菊ちゃん。
まさかそんなことを言ってくれるなんて思っていなかったから、私は少し驚いて彼女を見つめた。
「むしろ真司の良いところ見つかって良かったね」
菊ちゃんはニッコリ笑って私を見ていた。
彼女の目は私をなんでも理解してくれている感じがして、とても安心した。
「今日の午後、美術の授業だね」
思い出したように菊ちゃんはそう言って、私の肩に手を回した。
「もうこの際、目が合うまでずーっと見てたらいいんだよ!で、目が合ったら笑ってみな」
「え、でも、そんなことして困らせないかなぁ」
「いいのいいの、困らせちゃえ」
大笑いしながら話してくれる菊ちゃんに、私はなんとなく救われた気がした。