こころ、ふわり
それから数十分が経った頃。
ようやくモミジの木を中心とした風景画が完成した私は、達成感に溢れながら
「芦屋先生、出来たよ」
と立ち上がった。
返事が無いので、私は不思議に思ってもう一度呼びかける。
「芦屋先生?」
やっぱり返事は無かった。
先生が座っている机に近づいてやっと分かった。
メガネを外したまま、机に体を横たえて眠っていた。
今までで1番無防備で、気の抜けた先生の姿。
ここぞとばかりに観察してみる。
右手がだらんと机から下がっていて、血管の浮き出た腕とか、私が好きな細くて長い指がしっかり見えた。
クシャっとした髪の毛も撫でてみたい。
「先生、好き」
と、思わず言葉が口から漏れ出る。
先生は深い眠りに入っているのか、ピクリとも動かなかった。