こころ、ふわり


「芦屋先生、ごめんね」


もう、謝ることしか私には出来なかった。


先生は私を気づかってくれているのか、


「気にしないで、って言ったでしょ」


と微笑んでくれた。





━━━━━ところが。


20分ほど車を走らせたところで、芦屋先生はブレーキを踏んだ。


なにやら交通整理の人たちが道路に立っていて、止められたらしい。


先生が窓を開けると、交通整理のおじさんが声をかけてきた。


「Uターンお願いします」


「何かあったんですか?」


「ここから先、道路が冠水していて通れないんですよ」


「そうですか」


芦屋先生は窓を閉めて、いったん来た道を引き返す。


その後も何箇所かで冠水のために道路が封鎖されてしまっていて、Uターンを余儀なくされた。


信号待ちのたびに先生は地図を開いて、あらゆるルートを模索してくれていた。


「先生?」


地図を指でなぞりながら、道を探す芦屋先生に話しかける。


「私……家に帰れますか?」


「……」


芦屋先生は返事をしてくれなかった。

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