こころ、ふわり
先生が作ってくれた朝ごはんは、トーストとサラダと目玉焼きだった。
「先生って、料理が好きなんですか?」
焼きたてのトーストを頬張りながら、向かいに座る先生に尋ねてみると、彼は意外にも否定した。
「好きではないよ。買ってきた弁当とか、外食の時もあるしね。自炊は週の半分くらいかな」
「一人暮らし、長いんですか?」
私が何気なく聞いたその問いかけに対して、先生はなんとも答えがたいような顔で苦笑いするのだった。
「一人暮らしっていうか……うーん、まぁ……なんていうか、2年前までは彼女とずっと同棲してたんだ」
「……そ、そうですか」
予想していなかった先生の返答に、私は自分の口から情けないくらい震えたような声が出てきた。
当たり前のことだけれど、先生は26歳なのだから今までに付き合った人は何人かいるはずなのだ。
そんなの分かっていたことなのに、いざ目の前で彼女だとか同棲だとか、そういう言葉を聞いたら心がザワザワと揺れる思いがした。