こころ、ふわり
授業時間が進む中、突然女子の悲鳴が上がった。
私も菊ちゃんもびっくりして顔を上げる。
どうやらクラスメイトの里美という子が、誤って針金を指に刺してしまって流血したようだった。
「里美、大丈夫!?」
彼女の隣に座っていた子が心配そうな声を上げた。
里美は痛みからなのかボロボロ涙をこぼして、流血する右手をぎゅっと胸に抱いていた。
するとすぐさま芦屋先生が里美のもとへ行き、ポケットからハンカチを出して彼女の指にあてた。
「大丈夫?少し右手を上にあげられるかな」
流血を最小限に抑えるために、先生は彼女の右手をハンカチで押さえたまま顔のあたりまで持ち上げた。
里美は遠目から見ても少し震えていた。
そんな里美を気づかうように芦屋先生が彼女の背中をさすってあげているのが見えた。
「保健室に行こう。一緒に行くから」
先生は里美がうなずいたのを見て、
「少し授業抜けるね。みんなは続けて」
と声をかけると美術室を出ていった。