こころ、ふわり
ほら、ね。
私は心の中で自分に言い聞かせた。
芦屋先生は、私だけに優しいわけではない。
1ヶ月前に大怪我をした私の元へ来てくれたのだって、今と同じことなのだ。
誰がどんな怪我をしても、あんな風に素早く駆けつけてくれて、そして優しく寄り添ってくれる。
私は別に特別とかじゃないんだ。
スケッチブックの間から、モネの画集の背表紙がはみ出てしまっていた。
ほんの少し期待していた自分を隠すように、その画集をスケッチブックの間に押し込んで隠した。
クラスメイトが怪我をしたっていうのに、私はなんてことを考えているんだと虚しくなる。
先生は私を真面目だなんて言っていたけれど、本当の私は自己中心的でわがままだ。
そんな自分を知られたくなくて、知らず知らずのうちに演じていたのかもしれない。