こころ、ふわり


「入ってもいい?」


芦屋先生の問いかけに、私は「はい」と言った。


もちろん、その声も裏返って変な声になっていた。


カーテンが揺れて、少し開いた。
そこから芦屋先生が顔を出す。


「体調はどう?」


「貧血起こしちゃったみたいで……でももう大丈夫です」


私が答えると、彼は目を細めてなんとなく疑うような顔をした。


「本当に?無理してない?」


ギクッと心が動く。


無理をしているつもりは無かったけれど、まだ少し頭がクラクラする感じはあった。


先生には私の下手な演技なんてお見通しなのかな。


「先生、ごめんなさい」


私は謝りたかったことをすぐに口にした。


「え?なにが? 」


意外そうな反応を見せる芦屋先生に、私はベッドの上で頭を下げた。


「先生の挨拶中に倒れちゃったから、台無しにしちゃったよね。だから、ごめんなさい」


「なんだ、そんなことか」


先生は微笑むと、


「そんなことは大したことじゃないよ。むしろ気にかけてくれてありがとう」


と言ってくれた。


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