こころ、ふわり
美術室から出ると、扉のすぐそばに真司がいて驚いた。
彼は私を待っていたのか、それとも先生との会話を聞いていたのか。
さっき澪との話を聞いていたのだとしたら、彼は私と先生のことをすべて把握してしまっている。
なんて声をかけようか考えていたら、真司が先に口を開いた。
「萩。お前、本気なのか?」
「な、なにが?」
一応、何も知らないという前提で聞き返してみる。
しかしおそらく彼はなにもかも知っている。
それは分かった。
「相手は先生だぞ。誰かに見られたらどうするんだ?先生だけじゃない。お前も大変なことになる」
真司はまくし立てるように私に言葉を浴びせてくる。
「分かってるもん」
私はそんな説得力の欠片もないような返事しか出来なかった。
だって、もう自分自身でブレーキがかけられなくなっている。
少しずつ、本当に少しずつだけど、先生と距離が縮まっているような気がして余計に止められなかった。
「もう行くね」
責められるのが怖くて、私はそれだけ告げて真司の元を離れた。