こころ、ふわり


お礼を言われることなんてしていないのに、先生はきっと私に責任を感じさせないように言ってくれてるんだ。


嬉しくて泣きそうになっていると、なんの前触れもなくものすごく大きい響くような音が聞こえた。


芦屋先生が目を丸くする。
私も目を丸くした。


「今の……」


先生の焦げ茶の瞳が私をとらえる。


私は無意識に自分のお腹を両手で抱えると、消え入りそうな声で


「す、すみません!お腹すいて、鳴っちゃった」


とつぶやき、芦屋先生の顔が見れなくて目をギュッとつむった。


「ブッ!」


カーテンの外から吹き出す声。
クニコ先生にも私のお腹の音が聞こえたらしく、思わず笑っているようだ。


恥ずかしい。
きっと朝ごはんを食べなかったから、お腹が空いちゃったんだ。
むしろ、倒れたのは空腹が原因かもしれない。


芦屋先生はフッと笑うと私に


「吉澤さんって本当に面白い子だね」


と言った。


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