こころ、ふわり
菊ちゃんは知らない。
私と芦屋先生が付き合うことになったということを。
というか、むしろ誰にも言っていない。
菊ちゃんと澪には言いたかったけれど、先生と付き合うという後ろめたさみたいなものがあって言えずにいた。
そしてクリスマスの予定も、付き合うことになった日に先生に誘われていた。
「今度のクリスマスは、せっかくだからデートしようか?」
と、先生に言ってもらって、頭に血がのぼったままの顔で何度もうなずいたのを思い出す。
何もかもが夢のようで、でも現実で。
私の心だけが置いてけぼりで。
携帯の電話帳に芦屋先生の名前が登録されたことなんかも、まだ信じられなくて毎晩こっそり確認したりしているくらい。
目の前の菊ちゃんをチラッと見る。
菊ちゃんは彼氏が出来てから、本当に綺麗になった。
彼氏が出来ても、私のような友達との時間はちゃんと作ってくれて本当にすごいなと思う。
「初詣は一緒に行こうね!」
という菊ちゃんの言葉に、私は笑って「うん」と返事をした。
私も菊ちゃんみたいに、芦屋先生と付き合うことで少しは女らしくなれるかな。
そんなことを思いながら……。