こころ、ふわり
今年のクリスマスは日曜日だったので、部活も無い。
その代わり、街はとても混雑していそうだなぁと思った。
クリスマス当日、先生が家のそばまで迎えに来てくれることになっていたので約束の時間に合わせて準備をしていた。
昨夜は緊張でほとんど眠れなくて、フラフラの頭で今日着ていく服を選ぶ。
ずっと前に菊ちゃんとお揃いで買った膝丈の花柄のスカートにしようとクローゼットから引っ張り出してから、ふと動きを止める。
子供っぽいかな、と迷う。
芦屋先生は26歳だし。
私とは9歳も違うのだ。
前に徳山先生とデートしている澪を見た時は、まさか同級生だと思いもしなかった。
澪みたいに大人っぽい服にするべきなのだろうか。
迷っているうちにどんどん時間が過ぎていく。
時計とにらめっこしながら、結局薄いグレーのニットにデニムスカートというなんとも無難な服にして、その上に黒いダウンを着た。
机の上に置いていた変装用のニット帽とマスクも身につけ、バッグと紙袋を持って部屋を出た。
リビングにいる両親に「出かけてくるね」と声をかけた。
「何その格好!風邪も引いてないのに」
お母さんが私の服装を見て笑っていた。
「いいの。寒いから。じゃあ行ってきます」
と、それだけ言い残して家を出た。