こころ、ふわり
運ばれてきたケーキを食べながら私は紅茶を飲み、先生はコーヒーを飲む。
なんとなく顔を隠すように食べる私を、先生が面白そうに見ている。
なんだか今日は笑われてばかりで、私だけ空回りしているような気がした。
「プレゼント、何か欲しいのは無いの?」
先生がしきりに尋ねてくるので、だんだん私も何か欲しくなってきてしまった。
自分の欲張りさを呪いながらも、周りのお客さんに目を向けてみる。
斜め向かいに座る大人っぽい女の人がつけているネックレスが目に入り、少し背伸びしているかもしれないけれどあんな感じのが欲しいと思った。
ゴールドのチェーンで、本当に小さな小さな何かチャームがついている、華奢なネックレス。
あれくらいなら普段つけていても制服のブラウスのボタンをちゃんと閉めていれば見えないだろう。
「あの……ネックレスでもいいですか?」
おそるおそる提案してみると、芦屋先生はホッとしたように胸をなで下ろしていた。
「決まって良かった。遠慮してるんじゃないかと思ったから」
「いえ、もう、安いので大丈夫なので!」
「せっかくだからちゃんとしたのにしよう」
私の意見は先生の耳を通過しているのか、まったく聞く耳持たずで話が進んでいった。