こころ、ふわり


さっきまで芦屋先生がいた場所に戻ったものの、先生の姿が見つからなかった。


どこに行ったのかと探そうとしたら、後ろから先生に肩を叩かれる。


「吉澤さん、こっち来て」


先生は私が選んだお店とは違う、少し落ち着いた雰囲気のお店に私を連れてくると、


「これ、さっきのに似てるけどどう?」


と尋ねてきた。


手には私がさっき選んだネックレスと、ほとんど似たデザインのものを持っていた。


「可愛い!」


「そう、良かった。これにしようか」


「はい!」


と、返事をしたところで私は我に返った。


「先生、それいくらですか?」


「いいよ、値段のことは気にしないで」


さっさと会計に向かってしまった先生を止められることも出来ず、待つ間に店内を少し歩いて回る。


置いてあるアクセサリーを見ると、さっきのお店よりも断然高価なものが多く、きっとメッキがどうとか言っていたから、そうではないちゃんとした物を選んでくれたのだと感じた。


会計を終えた先生が私のところへ来ると、ちゃんとラッピングしてもらったちいさな紙袋を渡してきた。


「じゃあ、これがクリスマスプレゼントでいいかな」


「ありがとうございます」


夢みたい、と思いながら受け取る。


先生と付き合ってから、何度「夢みたいだ」と感じただろう。


それくらい嬉しかった。


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