こころ、ふわり
「新しく来た先生って誰?」
俺にも教えろとばかりに私たちの会話に入ってくる真司。
彼は宿題を写していたので朝の集会には出ていないはずだ。
だからきっと芦屋先生のことは顔も知らないだろう。
「美術の先生。堀川先生の代わりに来たんだって。静かそうな感じの先生だよ。ね、萩?」
菊ちゃんが真司に説明しながら私にも同意を求めてくる。
私はこれまた曖昧にうなずくくらいしか出来なかった。
「ふーん……」
真司はそうつぶやいて私の顔をじっと見る。
何か言いたげな目をしていた。
「どうかした?」
私が尋ねると、彼は「別に」と言ってフイと顔を背けた。
そんなやりとりをしてる間に教室にたどり着く。
私たちは賑やかな教室に入り、またいつもの光景の中に溶け込んだ。
倒れた私を心配してクラスメイトに取り囲まれながら、心のどこかで芦屋先生のことを考えていた。
どうして親友の菊ちゃんにまで芦屋先生とすでに夏休み前に知り合っていた事を話せないのだろう、と。
隠すことなんてないはずなのに。
そして芦屋先生のことを思い出すたびに、胸がモヤモヤして、フワフワするのだった。
この感情がなんなのか、今の時点ではわからなくて困惑していた。