こころ、ふわり
車に乗込んですぐ、私は助手席の足元に置いたままにしていた先生へのプレゼントを手に取った。
このタイミングで渡してしまおうかとも思ったものの、帰り際でいいかと思い直して再び足元に戻す。
車が走り出してから、ようやくニット帽とマスクを外すことが出来た。
「今日はお疲れ様」
ニット帽でぺったんこになった髪の毛を直す私に、先生がねぎらいの言葉をかけてくれる。
「先生こそ疲れてませんか?私みたいなお子様の相手」
「全然疲れてないよ。今日は楽しかったよ」
先生がすんなりそう言ってくれるから、私まで素直になれそうだった。
「わ、私も……楽しかったです。すごく」
精一杯の気持ちを伝えなきゃと、両手をギュッと握る。
「プレゼントもありがとうございました。早速明日からつけます」
「喜んでもらえて良かった」
先生は笑ってくれた。
今日1日を通して、芦屋先生はいつもに増して優しく笑いかけてくれていたな、と
思い出す。
きっと緊張している私のことを少しでも和らげようと思ってくれていたに違いない。