こころ、ふわり
「あの……先生?」
私が震える声で呼びかけると、先生は首をかしげた。
「なに?」
「あの、あのですね……お気づきかもしれないんですけど……私、男の人と付き合うのが……は、初めてなんです」
私の突然のカミングアウトを聞いて、先生は少しびっくりしたのか「そう」とだけ返してきた。
「だ、だから……あの……」
言いたいことがうまく言えず、もどかしい。
私の気持ちを代弁するつもりで、先生は
「キスしないから安心して」
と優しく言った。
「違うんです」
私は急いで首を振って先生の袖を握った。
「あの……キスを……キスをしてもらう時はどうすればいいですか?」
「え?」
先生は私の言葉を聞き返したあと、そういうことかと理解したのかフッと微笑むと
「じっとしてて」
と言った。
そしてすぐに私の背中に先生の手が回されて、抱き寄せられた。
そのまま先生が首を少しだけ傾ける。
唇が重なった。