こころ、ふわり


菊ちゃんは私に内緒で村田くんに駅前で待ってもらっていたらしい。


サバサバした菊ちゃんと、おっとりした村田くんはとてもお似合いだった。


「いいなぁ……」


と自然に言葉が漏れる。


こんな風に誰かに「この人が彼氏だよ」と堂々と紹介できる菊ちゃんがうらやましくなってしまった。


「萩だって頑張ってるじゃん」


フォローするつもりで言ってくれている菊ちゃんにも、少し申し訳なくなった。


やっぱりいずれは彼女には芦屋先生のことを言いたい。


紹介なんかは出来ないけれど、ずっと話を聞いてもらっていたのだからちゃんと報告しないといけないような気がした。


その後、ラブラブな2人と別れて電車に乗った私は、携帯につけた赤いとんぼ玉のストラップを見下ろした。


もしも、学校で芦屋先生と顔を合わせたら……変な態度になってしまわないかな。


自分の性格は分かっているつもりだ。


きっと私は、先生を目の前にしたら胸がドキドキしてしまって、下手したら抱きしめ合ったこととかキスしたことまで思い出して、恥ずかしくなって口も聞けなくなりそうだ。


先生には会いたいけれど、学校の中で会うのは少し怖い気もした。









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