こころ、ふわり


結局、芦屋先生は押しに負けてビールを飲むことになり、私と澪はオレンジジュースで4人で乾杯をした。


澪がササッと素早く4人分の料理を取り分けてくれて、私はただただ美味しくご飯を食べさせてもらった。


ガツガツ食べる私を見て、また徳山先生が笑っていた。


先生の笑う姿を見られるのはありがたいけれど、何が面白いのかさっぱり分からない。


「と、徳山先生?私なにか面白いことしてますか?」


勇気を出して尋ねてみたら、徳山先生は一瞬目を丸くして


「あ、ごめん。気を悪くしたなら謝るよ」


とすぐに笑うのをやめてしまった。


「違うよ、萩」


徳山先生の代わりに澪が答える。


「透はね、萩のイメージは真面目で目立たない子だと思ってたんだって。でも話してみたらおっちょこちょいで、それなのに生真面目で、ところどころ突拍子もない動きをしたりして、目が離せないんだって」


まるで私の性格を完全に把握しているかのごとく、スラスラと説明してくれた澪。


悔しいけれど、彼女が言っていることは何も間違ってなんかいない。


「大人しそうに見えて、実は大食い、とかね」


と、つけ加えるように徳山先生が言う。


そんなことありません!と否定しようとしたら、隣の芦屋先生がビールを吹き出した。


咳き込む先生をよく見ると、笑うのを必死に耐えている顔をしていた。


「せ、先生!」


お腹の虫が鳴ったのを2回も聞かれたことがあるので、芦屋先生は私がいかに食いしん坊なのかを知っている。


この3人の前では、私はアウェイだと思い知った。

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