こころ、ふわり


「そうかなぁ」


と返すのが精一杯の私に、菊ちゃんがやや疑わしげに口をとがらせる。


「ねぇ、ずっと気になってたんだけどさ、なんか私に隠してない?この間から萩の態度もおかしいと思ってたんだよね」


腕を組んで臨戦態勢に入った菊ちゃん。


ここで事情聴取されても困ると思い、答えをはぐらかして笑ってごまかす。


「今日はカツ丼大盛りにしようかな」


「あ、私も大盛りにする!……ん?ごまかしたな?」


一瞬話に乗ってから我に返る菊ちゃんが面白くて吹き出してしまった。


いつか話さなきゃって思えば思うほど、なぜだか言えなくなる。


菊ちゃんなら絶対喜んでくれるというのは分かっている。


でも仮に話したとして。


私が芦屋先生と会話を交わそうものなら、菊ちゃんは間違いなく分かりやすいほどニヤニヤしたりしてしまいそうで、ちょっとドキドキする。


「菊ちゃん。今度の日曜日遊ばない?その時にちゃんと話すから」


と誘ってみたら、彼女はすぐに目を輝かせた。


「空いてる空いてる!遊ぼう!どんな話が聞けるのかなぁ〜」


菊ちゃんはまさか私たちが付き合うことになったなんて、夢にも思っていないのだろうな。


どんな反応を示すのか少し怖い気もした。


大声を出されてもいいように、カラオケにでも行こうと密かに思うのだった。









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