こころ、ふわり


1時間以上かかったけれど、お互いにひとまずお菓子作りは終わった。


洗い物をいそいそ片付けて、私と菊ちゃんはリビングのソファに体を沈めた。


「あのさぁ、萩にお願いがあるんだ」


スナック菓子を絶えず口に運んでいた私は、神妙な面持ちの菊ちゃんの言葉で


「お願い?」


と彼女の方を見た。


「あの……ね、来週の土曜日の夜なんだけど、萩の家に泊まらせてもらうってことにしてもいいかなぁ?」


「あ、うちに泊まりに来るの?いいよ、日曜日ちょっと用事あるけど」


来週の日曜日は市内の美術館に芦屋先生とクロード・モネの展覧会に行く約束をしていた。


私がそう答えると、菊ちゃんは「違うの」と首を振った。


「アリバイ作り。本当は村田くんとお泊まりなの。万が一親にバレたら怒られるからさ」


「お、お泊まり……」


私はドキッとしてしまった。


「そういうことなら、もちろん協力するよ」


と快諾すると、菊ちゃんはホッとしたように笑顔になった。


「ごめんね、こんなこと頼めるの萩しかいないからさ」


< 402 / 633 >

この作品をシェア

pagetop