こころ、ふわり


「菊ちゃん、私も話したいことがあるんだ」


私はついに菊ちゃんにきちんと話す決意をした。


今まで散々、何回も何回も打ち明けようとして言えなかった話。


「うん。なに?」


菊ちゃんは私が買ってきたチョコパイをつまみながら、私を見つめてくる。


「芦屋先生と付き合ってるんだ」


私の口から出た言葉を、菊ちゃんは一瞬理解出来なかったようでいったん息を飲むのが聞こえた。


長いようで短い沈黙。


「えっ」


と小さく声を漏らした菊ちゃんは、途端にこれでもかというくらいに目を見開いた。


「えーーーーーーーーーーー!?」


家中に響き渡る叫び声を上げる菊ちゃん。


想像のついた反応だった。


「嘘でしょ?いつの間に!?」
「どういうこと!?」
「いったん落ち着かせて!」


と矢継ぎ早に言葉を続け、ゴクゴクとジュースを飲み干してコップをテーブルに叩きつけるように置いた。


「とりあえず、嬉しい!おめでとう!」


菊ちゃんはそう言って私を抱きしめる。


「両想いだったんだね。先生やるじゃん」


「ありがとう」


私が思ったより笑わないからか、菊ちゃんはすぐにピンと来たのか


「萩のことだからそう簡単に喜べないでしょ?本当はダメなのにって思って、私にもなかなか言えなかったとか?」


と笑みを浮かべた。


さすがの指摘で、そしてまさにその通りでうなずくしかなかった。


「そう。そうなんだ。だって実際、誰かに見られたりでもしたら、私と先生はどうなっちゃうんだろうってそればかり考えちゃって……」


「だから2人とも、学校で話さなくなったってことね」


すべてのつじつまが合って、菊ちゃんはスッキリした顔をしていた。

< 403 / 633 >

この作品をシェア

pagetop