こころ、ふわり
その日の午後、美術の授業を受けるために美術室へ向かう途中、菊ちゃんと職員室へ立ち寄った。
菊ちゃんが弓道部の顧問の先生に用事があったから、それに付き添っただけだった。
1人で待っている間、職員室の外から中の様子を伺う。
芦屋先生は職員室にはいなかった。
いつも先生が座っているデスクを見たら、何個か小さな箱や袋が置いてあって、それは遠目で見てもバレンタインの包みだということが分かった。
きっと女性の先生たちからもらっただけだ、と自分に言い聞かせる。
すると、廊下の向こうから芦屋先生がこちらに歩いてくるのが見えた。
私はなぜか無意識に反対方向へ方向転換し、芦屋先生に見えないように身を隠した。
そんな私の横を、2人の女子生徒が通過する。
「あ!芦屋先生いたいた」
と楽しそうな声。
私はおそるおそる後ろをのぞき見た。