こころ、ふわり


その日の午後、美術の授業を受けるために美術室へ向かう途中、菊ちゃんと職員室へ立ち寄った。


菊ちゃんが弓道部の顧問の先生に用事があったから、それに付き添っただけだった。


1人で待っている間、職員室の外から中の様子を伺う。


芦屋先生は職員室にはいなかった。


いつも先生が座っているデスクを見たら、何個か小さな箱や袋が置いてあって、それは遠目で見てもバレンタインの包みだということが分かった。


きっと女性の先生たちからもらっただけだ、と自分に言い聞かせる。


すると、廊下の向こうから芦屋先生がこちらに歩いてくるのが見えた。


私はなぜか無意識に反対方向へ方向転換し、芦屋先生に見えないように身を隠した。


そんな私の横を、2人の女子生徒が通過する。


「あ!芦屋先生いたいた」


と楽しそうな声。


私はおそるおそる後ろをのぞき見た。

< 408 / 633 >

この作品をシェア

pagetop