こころ、ふわり


その2人の女子生徒が、芦屋先生にバレンタインの包みらしきものを渡しているのが見えた。


「先生、いつもありがとうございまーす」


と、そう言って渡していた。


私のいる場所からは芦屋先生の表情はあまりよく見えなかった。


ただ、なんとなく困ったような先生の、


「あ、ありがとう」


という声だけはハッキリ聞こえた。


それからバタバタとその2人はこちらへ戻ってきて、また私の横を通過する。


その時、彼女たちが芦屋先生のことを


「かっこいい〜」


と言っているのが聞こえて、私はその場にかたまった。


いつもいつも徳山先生がかっこいいと言われ続けてきて、芦屋先生は影に隠れていたかもしれない。


私は第一印象では顔はかっこいいとか思わなかったし、好みでもなかった。


今は好きな人だからかっこいいと思っているけれど、自分の他にもこうやって先生に憧れとか好意を持っている人はいるのだ。


同級生の男の子に飽き飽きしている女子たちが若い男の先生に恋をすることは、たしかにありがちではある。


でも、なんとなく芦屋先生は徳山先生の影にいるからきっと大丈夫、と勝手に思い込んでいた。

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