こころ、ふわり
きっとこの格好を見たら、先生はまた笑うんだろうな。
どんな反応をするかはおおかた予想がついていた。
いつものように、いつもの場所で先生の車が来るのを待つ。
展覧会は市内の美術館で開催されている。
話題になっているからきっと人も多いだろうし、なにより万が一学校関係者が来ていたら困る。
いつどこで誰かに見られても平気なように、対策はしっかりしておかないといけなかった。
待ち合わせ場所に来た先生は、前のように私の前を通過するということはなく、ピッタリと私の前で車を停めてくれた。
「完全装備で逆にちょっと目立ってるよ」
と、車に乗り込んだらすぐに先生に指摘された。
そう言う先生の顔は、予想通り笑っていた。
「いいんです。今日は絶対にこの変装は外さないって決めてるんです」
断固とした私の宣誓を前にして、先生は楽しそうにうなずいた。
「そっか。いつも萩にばっかり変装させて悪いなって思ったから、今日は俺も持ってきたんだ」
と言って、おもむろに取り出したのはキャップとマスクだった。
先生はそれを身につけると
「ほら、これで不思議な2人組になれたね」
と目が笑う。
私は先生の変装姿に思わず吹き出してしまった。