こころ、ふわり
芦屋先生はしばらく考えていたようだったけれど、やがて私を探るような目で見てきた。
「誰にも見られず食事できる場所、あるけど……」
「本当ですか?どこですか?」
「俺の家」
私は予想外の先生の言葉で、その場にかたまる。
「で、でも……迷惑じゃないですか?」
と、それっぽい前置きをしてみる。
先生は絶対に迷惑だなんて言わないって分かっていながら、こんなことを言ってしまう自分が腹立たしい。
「大丈夫だよ。外食みたいな美味しいものは作れないけど、それでいいなら」
すでに私が料理を作らない前提で話を進めている先生に、文句のひとつでも言いたくなったものの何も言えるはずがない。
「あの……先生」
私は右手を小さく挙げて、
「カレーなら私も作れます」
と抵抗してみた。
「じゃあ一緒に作ろうか」
先生はそう言って、私を促しつつ歩き出した。