こころ、ふわり


先生の家の近所のスーパーで材料を買って、ついでに惣菜パンも購入した。


カレーを作るにあたり、出来上がるまでの時間を考えるとどう考えても私のお腹は待ってくれないと判断したのだ。


「こんなに食べてばっかりで、先生ちょっと引いてませんか?」


ようやく変装を解いた私が尋ねてみると、先生はなんてことないように肩をすくめた。


「食欲旺盛なのはいいことだよ。痩せの大食いってまさに萩のことだよね」


「私……痩せてません……菊ちゃんの方が痩せてます……」


「え?そうかな?」


体型のこととかシビアなところに平気で触れるあたり、先生の鈍感さも合わせて実感する。


私は食べれば食べた分太ってしまう体質だから、食べても太らないという菊ちゃんが羨ましかったりするのだ。


先生の家に足を踏み入れるのは2回目。


台風で電車が止まり道路も冠水してしまって、自宅に帰れなかった私を泊めてくれたあの日以来だった。


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