こころ、ふわり


なんとなく覚えている芦屋先生の家の間取り。


入ってすぐに洗面所があって、洗濯機が見える。
廊下の途中にある部屋は先生の作業部屋で、リビングからつながっているもうひとつの部屋は寝室だ。


キッチンは対面式で、そこで前回は先生がご飯を作ってくれたんだ。


いろんなことを思い出しながら、リビングのソファにバッグやコートを置かせてもらい、すでにキッチンにいる先生のもとへ駆け寄る。


2人でキッチンに並んでいると、新婚の夫婦みたいだと勝手に気持ちが盛り上がってしまった。


先生は私とは対照的に涼しい顔でじゃがいもの皮を包丁で器用に剥いている。


「先生、聞いてもいい?」


と、玉ねぎを切りながら声をかける。


「なに?」


「元カノのこと」


私のその言葉が意外だったのか、先生は手をすべらせてじゃがいもを落としてしまった。


「どうしてそんなこと聞きたいの?」


落ちたじゃがいもを拾って水で洗い直しながら、先生は困ったような表情を浮かべていた。


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