こころ、ふわり
「だって同棲までしてたんですよね?どうして別れちゃったのかなって気になったから」
私とは比べものにならないくらい、大人な女性だったんだろうなぁと想像してしまう。
「別れた理由はね、俺の仕事が忙しくて会話が減ったのが原因かな」
芦屋先生はじゃがいもの皮を剥きながら、丁寧に私の質問に答えてくれた。
「前にも話したけど、デザイン系の専門学校で講師をしてた頃は人手不足で今よりももっと忙しくて。それを引き合いに出されて別れ話されたら、止めることも出来なかった」
「その人のこと引きずったりしなかった?」
「う〜ん。そうだね、しばらくは……」
先生のこの曖昧な反応を見ると、引きずったらしい。
同棲までしていた相手が出ていって、ましてや家事全般を担っていた人ならばなおさらだ。
きっとなんでもこなす人だったんだろうな。
「先生は、私との年齢差とか……気にしたことありますか?」
この機会だから、気になっていたことを試しに聞いてみる。
「9歳も違うんですよ、私と先生。子供みたいで疲れませんか?」
「萩はいい意味で17歳らしさもあるし、大人びてる時もあるからな。俺は楽しいけど、逆に萩の方が疲れてるんじゃない?」
まさかそんなことを聞き返されると思ってもみなかったので、私は急いで首を振って否定した。
「そんなわけないじゃないですか!」
全力で否定したからか、先生は吹き出しそうな顔をしていた。
「そう。それなら何も問題ないね」
何も問題ない、という何気ない一言。
その一言が妙に嬉しかった。