こころ、ふわり
先生は慣れた手つきでじゃがいもとにんじんの皮をあっという間に剥いて切って、私のザク切りの玉ねぎと並べると料理の腕の差は一目瞭然だった。
そのまま玉ねぎを炒め始めた先生の手元を眺めていたら、ふと尋ねられた。
「卒業後の進路はどうするか決めてるの?」
「進路?」
私が聞き返すと、先生はうなずいた。
「3年生に上がる時に進路調査票が配られるみたいだよ。この間職員室でその話を耳にしたから、そういえば萩はどうするのかなぁと思って」
「私はもう、決めてますよ」
両親や菊ちゃんには少し前に話したことがあったけれど、先生に言うのは初めてだった。
「理学療法士になりたいので、そのための専門学校に行こうと思ってます」
「理学療法士か。病院でリハビリとかやってくれる人だよね」
理学療法士と聞いて、即座に先生は反応してくれた。
私はニコッと先生に笑いかけて
「弓道部に入ってからよく怪我してたけど、いつも行く病院の理学療法士の人たちにたくさんお世話になったから。こういう職業に就けたらなって思うようになりました」
と言った。
専門学校に入るのだって、そう簡単じゃないかもしれない。
出来ることなら推薦入学したいと思っていたので、なるべく学校の試験は手を抜かずに取り組んできたつもりだ。
「目標があるなら良かったよ」
芦屋先生は微笑んで、「頑張ってね」と言ってくれた。