こころ、ふわり
「生徒が生徒を注意するのってなかなか勇気がいるだろうしね」
「そうそう、そうなんですよ!せめて非常階段のところに生徒だけ配置するのをやめてくれればいいんですけど、星先生がエレベーター前に先生たちをかためる感じで決めちゃったから……」
私はそこまで言って、危なく星先生のことを「男好き」と口を滑らせてしまいそうになった。
芦屋先生は気づいているのだろうか、星先生がわざと徳山先生と芦屋先生を自分と同じ時間、同じ場所に配置したのを。
「そういうことなら、星先生に頼んでおこうか?俺か徳山先生のどっちかが非常階段に行けばいいよね?」
先生に提案されて、迷わずすぐにお願いしたかったけれど、いったん自分にストップをかける。
「でも……星先生はたぶん納得しないと思うので大丈夫です。誰か抜け出そうとする人がいたら、真司に注意してもらいますから」
どうせ星先生はなんやかんや理由をつけて配置換えはおこなわないはずだ。
話し合いの時に澪が何回か星先生にそのようなことをお願いしたにも関わらず、星先生はすべて聞き流して今の配置のままを通したからだ。
それならば腹をくくって、誰かホテルから抜けようとする人がいたなら真司に注意してもらえばいい。
澪と一緒に実行委員をやっているもう1人の男の子はあまり社交的ではないので、頼れるのは真司しかいない。
「倉本くんって、萩のこと好きだよね」
不意に芦屋先生がそんなことを言い出してきたので、私は耳を疑った。
「え?ど、ど、どうしてそう思うんですか?」
平常心、平常心と自分に言い聞かせるものの、声が上ずる。