こころ、ふわり
隠したいのに、うまく隠せない。
自分でも演技が下手だなぁとガッカリする。
「まぁ、見てればなんとなく分かるよ。最初の頃は付き合ってるのかと思ってたからね」
慌てふためく私を横目に、先生はカレーの味見をしながら言葉を続ける。
「好きな子ほどかまいたくなるってまさに倉本くんだなって思うよ」
私は何も言い返せなくて黙り込んでしまった。
それに気づいた先生がちょっと申し訳なさそうに肩をすくめる。
「あ、ごめん。この話はやめよっか」
真司のことを話題にしなければよかったと少しだけ後悔した。
芦屋先生は意外とちゃんといろんなことを見ているんだということを知ったような気がした。
先生は言わないだけで、たぶんたくさんのことを考えて、言葉を選んでくれているのだ。
今回の真司のことだって、私が名前を出したりしなければ言ってこなかっただろう。
私なんて気になるという気持ちだけで先生の昔の恋人の話までつい聞いてしまったというのに。