こころ、ふわり


「カレー出来たよ。食べよう」


とお皿を2枚出してご飯を盛る先生の後ろ姿を見ていたら、なんだか急に心が締めつけられた。


この間のバレンタインの時なんて、やきもちをあらわにして先生に不満をぶつけたりして騒いでしまった。


自分ばかりが子供で、先生はとても大人。


強くそう思ってしまい、切なくなった。


「先生」


私は先生の腕にしがみつくように抱きついた。


「先生はやきもちとか、焼かないの?」


「やきもち?」


先生が驚いたような目で私を見下ろす。


そして、すぐにご飯を盛る手を止めて私を抱きしめてくれた。


「それなりに嫉妬する時はあるよ。でもそういう感情を表に出すのは苦手だな」


「真司のことは?」


「もちろん嫌な気持ちにはなったけど……」


困ったように眉を寄せる先生の表情を見て、私はハッと我に返る。


これでは、やきもち焼いてくださいと言っているようなものだ。


「ご、ごめんなさい。変なこと言っちゃって」


大人にならなきゃと思っている矢先にこの発言。
自分でも悲しくなる。


< 433 / 633 >

この作品をシェア

pagetop