こころ、ふわり
部屋を出たところで、ちょうどよく芦屋先生に遭遇した。
先生もこれから見張りに行くところだった。
あまりに生徒数が多かったのもあって、今日初めて芦屋先生を見た。
「旅行、楽しんでる?」
芦屋先生は私にそう尋ねてきたけれど、素直にハイと言えない自分がいた。
「もう、実行委員のやることが多くて疲れちゃってます」
「そうだよね。見張り番も、あまり人が来ないようだったらみんなで交代して休んでいいからね」
「はい」
別に何もやましい会話なんてしていないしプライベートな内容でもなのに、こうして2人で話しているだけでドキドキしてしまった。
エレベーター前にはすでに星先生と徳山先生と、もう1人副担任の先生が到着していた。
芦屋先生を見るなり、星先生が嬉しそうに手招きしている。
私はそんな星先生を横目に見ながらエレベーター前を通過して、非常階段の方へ向かった。
まだ夕食後間もないということもあり、ホテルのフロアの廊下は生徒たちの姿もまだけっこう見られていて、友だち同士で部屋を行き来したり、下の階の売店に出かける人もいた。
非常階段に着いた私は、澪の姿が無いことに気がついた。
真司と、澪のクラスの実行委員の男子生徒は階段に座る格好で私を迎え入れてくれた。