こころ、ふわり


「澪は?」


違う場所にでもいるのかと周りを見回しながら私が尋ねると、澪のクラスの彼が口を開いた。


「なんか体調悪いみたいで、今日は来れないって」


「え!そうなの?」


生理痛か、はたまた環境の変化で頭痛でもしているのか。


ちょっと心配にもなったけれど、何かあった時のためにホテルの一室を救護室として使うことにもなっていて空けてあるので、万が一の時はそこに行けば大丈夫だと思った。


「いいよなー、みんな楽しそうで」


賑やかな廊下を見渡せるこの非常階段にポツンと座る私たち3人。


つぶやく真司の声が非常階段に響き渡った。


「ここで2時間半ってけっこう長いよな」


はぁ、とため息をつく真司に、もう1人の彼がポケットから何かを取り出した。


「ヒマになると思ってトランプ持ってきた」


「ほんと!?助かる〜!」


なんて気の利く人なんだとばかりに真司が飛び上がる。


トランプだけでここまで喜んでもらえるなんて、まさか彼も思っていなかっただろう。


3人でババ抜きをしながら、世間話を繰り広げる。


今日行った観光地の話とか、修学旅行から帰ったあとにある定期試験の話とか。


そんなに当たり障りのない話だった。


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