こころ、ふわり


大きなあくびを無意識にしてしまい、私は我に返って口を手でふさぐ。


星先生が笑っていた。


「吉澤さん、お疲れみたいね」


「昨日、みんなで話してたら寝るのが遅くなっちゃって」


「分かる〜!女子同士で恋愛の話とかして盛り上がるよね、修学旅行って」


うふふ、と星先生は楽しそうに笑みを浮かべて、あろうことか徳山先生や他の先生もいるというのに


「吉澤さんって彼氏はいるの?」


と尋ねてきた。


「い、いえ……いないです……」


震える声で答えた私に、退屈しのぎなのか星先生はどんどん聞いてくる。


「好きな人はいるんでしょ?だれだれ?うちのクラス?」


「いないです、好きな人も」


なんでこんなことに答えなきゃいけないのかと思いつつも、答えないと変に思われるんじゃないかと怯えてしまって、適当に答えておいた。


期待した返事が無かったからか、星先生はちょっと不満そうに口をとからせていた。


「好きな人くらい作っておきなさいよ〜。高校生活楽しくなるわよ」


「星先生」


不意に徳山先生がなんとなく冷めた声で呼び止めて、星先生を見やる。


「不謹慎ですよ。吉澤さんも困ってますから」


「あら、そう?ごめんなさい」


ちっとも悪びれる様子もなく、星先生は肩をすくめる程度だった。

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