こころ、ふわり


徳山先生に憧れを抱くクラスメイトの何人かが「え〜っ」と失望の声を上げる中、授業は粛々と進んだ。


世界史の授業が終わったあと、菊ちゃんが私の机まで近づいてきた。


「徳山先生が休みだなんてどうしたんだろうね?インフルエンザとか?」


「そうか……インフルエンザか」


それなら私も納得がいく。


きっと5日後くらいにはいつもみたいにクールな徳山先生が教室に入ってきて、射るような目つきで授業を始めるんだ。


そうだ。
澪に聞きに行ってみよう。


私は思い立って、澪がいる6組へ向った。


6組の教室までたどり着いて、ドアのそばから中の様子を見てみる。


休み時間だから、空いている席の方が多い。


澪の姿も無く、席を外しているのだと思った。


教室の中に、修学旅行の実行委員をしたあの男子生徒を見つけて声をかけてみる。


「ねぇ、澪ってどこに行ったか分かる?」


彼は「さぁ」と首をかしげた。


「分かんない。昨日から見てない」


「……え?」


彼がいっている意味が理解出来なくて、私は「どういうこと?」ともう一度聞いた。


「最終日の昨日、朝からいなかった。先生に聞いても曖昧に答えるしさ。今日も朝から来てないよ。休みだって言ってたけど」


私は混乱する頭のまま、とりあえず


「ありがとう」


とだけ返し、教室を出た。


澪もインフルエンザなのか?


昨日、帰りの空港で感じた嫌な予感がよぎる。


< 455 / 633 >

この作品をシェア

pagetop