こころ、ふわり


「知らなかったです」


芦屋先生に言われた通りに、知らないの一点張りで突き通そうと心に決めて答えていく。


「相川と仲良かったんだろ?付き合ってる人がいるとか、そういうことは聞いてなかったのか?」


高野先生のこの質問を聞いて、そう来たか、と一瞬答えに詰まる。


なんと言えば不自然ではないのか、考えれば考えるほど分からなくなる。


「好きな人がいる、とだけ聞いてました。でも、それだけです」


私の当たり障りのない返事を、高野先生がどう受け止めているのかが気になる。


2人の先生はひたすら私の顔色を探っているようにも見えた。


「もしも、吉澤が何か知ってたら教えてほしかったんだ」


高野先生がつぶやく。


「徳山先生と相川の話が食い違ってるんだ」


「え?」


思わず聞き返してしまった。


ようやく星先生が口を開く。


「ホテルを抜け出したあの日、徳山先生は彼女を無理やり連れ出したから自分が悪いと主張していてね。相川さんは相川さんで、自分がワガママを言って、嫌がる徳山先生に外出したいとお願いしたって言うのよ」


私は、話を聞きながら切なくなった。


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