こころ、ふわり
ボーッとした頭で芦屋先生を見つめ続けていると、ふと先生はこちらを振り返った。
急いで目をそらして手元の真っ白なスケッチブックを見下ろして、鉛筆を握り直す。
「大丈夫?描けそう?」
私が何も描いていないからか、芦屋先生はそばまで来てスケッチブックをのぞき込んできた。
「だ、大丈夫です」
答えながら、顔が赤くなっていないか心配になる。
先生は指を私のスケッチブックにトン、と置くと
「鉛筆を持ってる手じゃなくてもいいんだよ。倉本くんの紙を支えてる左手でもいい。自由に、描きやすいようにやってみて」
と、とても優しい声で教えてくれた。
「分かりました」
私がうなずいて見せると、先生は「頑張ってね」と言い残して他の生徒たちの絵を見に移動していった。