こころ、ふわり


芦屋先生はまだ描けていない様子の生徒に声をかけているようだった。


きっと私にしてくれたようなアドバイスをみんなにもしているのだろう。


彼の姿を目で追いながら、私は大人数のうちの1人に過ぎないのだと心に言い聞かせた。


別に私だけに声をかけてくれるわけでもないし、貧血で倒れた時だって私じゃなくても駆けつけてくれていたと思う。


深いため息をついて、先生に言われた通りに真司の左手を描いてみようと彼の方を向いた時、真司と目が合った。


「おはぎさぁ」


と、真司は頬杖をついてこちらを見ながら何かを言おうとして、やめた様子だった。


スッと左手を出してくる。


「ほら。これなら見やすいだろ」


「えっ、ありがとう」


まさかこんな優しいことをしてくれるとは思っていなかったので、私は素直にお礼を言った。


「いいよ、別に」


真司はそう言って、描きかけの絵を描き始めた。











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