こころ、ふわり
先生の瞳が揺れる。
どうして動揺しているのかは、私には分からない。
もしかしたら、先生の中にはそんな選択肢が無かったのかもしれない。
「徳山先生と相川さんのことがあってから、これが自分たちの立場だったら、どうなるだろうと考えてた」
芦屋先生は静かな車内で、いつもの低い声で、なにか私に言い聞かせるみたいな話し方で話した。
「俺はどうなってもいい。でも、萩の人生を壊すことなんて出来ない」
「私だって……」
喉に言葉が詰まりそうになりながら、私も返事をする。
「私だって、先生に迷惑かけたくないよ」
「将来は、理学療法士になるんだよね?」
「え?」
突然、先生に聞かれて私は少し驚いて聞き返す。
「俺たちの関係が知られたら、その目標もすべて消えてしまうかもしれない」
先生が私の進路や将来のことを案じているということは分かったけれど、それは私にとってはどうでもいいことだった。
「わ、私はいいんです!私のことはどうでも」
どうでもいい、と言いかけたところで先生が強い口調で遮った。
「いいわけないだろ」
その言葉から、先生の苦悩がにじみ出ていく。
「俺が耐えられない」