こころ、ふわり
その日の帰り、菊ちゃんに早速部活でのダメ出しをされた。
「萩?後半の練習、フニャフニャの腑抜けになってたよ?」
「バレた?」
制服に着替えて汚れた練習着を抱えながら、私はごまかすように菊ちゃんに笑いかけた。
「なんか的に当たんなかったな~…」
弓道は集中力が勝負なので、その時の精神状態が面白いくらいに表面化する。
あの休憩を挟んでから、私の練習はかなり残念なものになってしまい、最終的に主将に怒られ、弓を持たせてもらえず筋トレをして終わった。
「何かあったの?」
菊ちゃんは心配してくれたけれど、心当たりがなくて「なんにも」と首を振った。
あったと言えば、あのスーツを着た猫背の男の人に会ったくらい。
お世話にも「かっこいい!」と豪語できるような雰囲気ではなかった。