こころ、ふわり


私が芦屋先生の元へたどり着き、絵を提出すると


「うまく描けたね」


と、柔らかく笑って褒めてくれた。


「時間かかっちゃいましたけど」


私は言いながら苦笑いして肩をすくめた。
真司にも腕が痛いと文句を言われた。


そこで先生の手を見て、私はさっき感じた自分の絵の違和感がなんだったのか気がつく。


真司の手を描いていたはずだったのに、いつの間にか先生の手を描いてしまっていたのだ。


きっと、絵を描いている時の綺麗で長い指とか、そういう部分が頭から離れなかったからもあるだろう。


私が自分の絵をじっと見つめたまま動かなくなったので、不思議に思った先生が「どうかした?」と聞いてくる。


「あっ、いえ……なんでもないです」


答えながらも、自分の行動に戸惑っていた。


いくら芦屋先生の手が綺麗だと思ったからと言って、まさか無意識に描いてしまうなんてどうかしている。


この間から、何かがおかしいのだ。


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