こころ、ふわり
授業を受けていても、休み時間に澪たちと話をしていても、お弁当を食べていても、気づくと芦屋先生のことばかり考えてしまった。
もう二度と先生が運転する黒い車には乗ることも出来ないし、先生と2人でどこかへ行くことも出来ないし、抱きしめてもらうことも出来ない。
昨日のショックが大きいのに、思い出すのは楽しかったことばかり。
ため息をつくと幸せが逃げると菊ちゃんが言っていたけれど、もうこれ以上の不幸はこれから先無いような気がしてしまって、ここぞとばかりに暇さえあればため息をついた。
こうなると部活に集中して打ち込むしかないと思ったのに、やっぱり部活中も変わらなくて。
矢が的に当たらなくて、練習にならなかった。
おまけに変なところで転んで膝を擦りむいたりして、散々だった。
保健室のクニコ先生に絆創膏を貼ってもらって、弓道場に戻る。
その途中、廊下の向こうに芦屋先生を発見してしまって、急いで階段に隠れる。
芦屋先生の隣には玉木先生がいて、彼女はそれはそれは嬉しそうに、可愛らしい笑顔で身振り手振りを加えて何か懸命に話していた。
遠くで2人の姿を見つめながら、またひとつ大きなため息をつくのだった。