こころ、ふわり
━━━━目を開けたら、保健室のベッドの上だった。
澪と若菜の心配そうな顔が私の顔をのぞき込んでいるのが分かった。
「あっ、萩!起きた!」
澪がホッとした表情に変わって笑顔になる。
「よかった。クニコ先生!目が覚めました!」
と、若菜がベッドの周りを囲んでいたカーテンを少し開けて、室内にいるクニコ先生を呼んでくれた。
「吉澤さん、大丈夫?」
ひょこっとカーテンからクニコ先生が現れる。
倒れた時にどこかにぶつけたのか、右の側頭部分が痛かった。
「大丈夫です」
答えながら、左手に包帯が巻かれていることに気づいた。
左手の人差し指を彫刻刀で切ってしまったらしい。
もう、倒れた時の記憶はすでに曖昧だった。
「血を見て貧血起こしたのかしらね?」
とクニコ先生は私のそばに来て、顔色を確認した。
「最近あまり寝てないからかもしれないです」
正直に睡眠不足を伝えると、先生だけじゃなく澪たちも眉を寄せて心配そうな表情になっていた。
「じゃあ少しここで休んでいきなさい。睡眠をとらないと体調を崩しやすくなるんだから」
クニコ先生はそう言って、静かにカーテンを開けて外に出ていった。