こころ、ふわり
菊ちゃんが言っている、いつもの私の顔と違うというのがよく分からなかった。
「ごめん……自分じゃよく分からないや」
言いながら、胸の奥がざわつくのを感じる。
まだ日差しがきつい午後の渡り廊下で、私と菊ちゃんは向かい合っていた。
菊ちゃんはなんだか心配しているような顔で私を見ていた。
そんな彼女に、私は思い切って打ち明ける。
「でもね、私……芦屋先生に初めて会ってから、なんかおかしいんだ。先生のことばっか考えちゃって。こんなこと今まで無かったから怖くて」
「萩……そうだったんだね」
「ねぇ、これって好きってことなのかな?憧れとかじゃなくて、好きなのかな?先生だから絶対だめじゃない?それなのに好きになるってありえないよね」
自分の感情を認めたくなくて、菊ちゃんに否定してほしくて、私はため込んでいた気持ちを彼女に出してしまった。
「先生のこと、なんにも知らないのに。私、おかしいよね……」
先生のことを考えるたびに胸がモヤモヤして、フワフワして。
本当はとてもドキドキしていたのに、見ないふりをしていた。