こころ、ふわり


落ち着け、落ち着け。
予想はしていたじゃないか。


前々から女のカンが働いていたじゃないか。


トイレの洗面台に手をついて、鏡に映る自分を見つめた。


芦屋先生は大人だから、大人の女性が良く似合う。


仮にこのまま玉木先生と付き合うなんてことになったらどうしよう。


大きく深呼吸して、不安だらけになった心をなんとか平常心に戻そうとした。


トイレから出たところで、タイミングがいいのか悪いのかちょうど玉木先生が私の前を通過していった。


華奢な体を細身のパンツスーツに身を包んでいて、いつものように長い髪はひとつに結んであった。


後ろ姿も綺麗で、思わず玉木先生の背中をじっと目で追ってしまった。


あんな人に色々誘われたりなんかしたら、たしかに若菜の言う通り芦屋先生も1回くらいは一緒に出かけたりしているかもしれない。


せめて私の知らないところで、私の知らない人と付き合って欲しいな。


私が口出しできる問題じゃないのは重々承知しているのだけれど。

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